中国、戦後補償問題で方針転換 強制連行の提訴受理
北京=古谷浩一、林望
2014年3月18日22時40分
中国の裁判所が18日、日中戦争時に中国から日本に強制連行されたとする中国人元労働者らの損害賠償を求める訴えを初めて受理した。中国当局はこれまで、日中関係への配慮などから同様な訴訟の受理をしてこなかっただけに、日本の戦後補償問題に対する事実上の方針転換といえる。
受理決定を受け、中国政府関係者は「訴えは筋が通っている。原告の訴えを日本側が放置してきた結果だ」と朝日新聞記者に語り、裁判所の判断を支持する姿勢を示した。
日本政府は1972年の日中共同声明で、戦時中の日本の行為に対する中国の賠償請求権は個人も含め「放棄された」との立場。最高裁も07年に強制連行の事実関係を認めつつ、「中国は個人の請求権も放棄した」との判断を示した。
強制連行集団提訴、北京の裁判所が初受理 全国に拡大か
北京=斎藤徳彦 北京=林望
2014年3月18日21時54分
戦時中に日本に強制連行され過酷な労働を強いられたとして、中国人元労働者らが三菱マテリアルと日本コークス工業(旧三井鉱山)を相手に損害賠償を求めた裁判で、北京市第1中級人民法院(地裁に相当)は18日、原告らの提訴を正式に受理した。中国の裁判所が強制連行被害者の訴訟を受け入れるのは初めて。
北京の裁判所が受理したことで、中国各地にいる他の被害者や遺族が原告に加わったり、各地の裁判所に同様の訴訟を起こしたりする可能性が高まった。
今回訴えを起こしたのは元労働者と遺族の計40人。1人当たり100万元(約1650万円)の損害賠償と謝罪広告の掲載を求めている。2月の提訴 後、3人が加わった。原告側代理人の康健弁護士は18日、受理決定を受けて原告らと記者会見を開き、「被害者の権利を守る上で重大な意義がある。裁判所は 断固として司法的な主権を行使するはずだ」と語った。
康弁護士によると、受理決定は今後、被告側にも伝えられ、審理が始まるのは数カ月後になる見通し。原告側は、中国から連行され被告の2社で働いた労働者は9400人余りに上るほか、強制連行の被害者は中国全体で約3万9千人に達し、日本企業35社が関与したと主張している。
中国の裁判所はこれまで、元労働者らが過去に起こした損害賠償請求の訴えを受理してこなかった。背景には裁判所を影響下に置く中国指導部による日中関係に対する配慮もあったとみられるが、歴史問題をめぐる両国政府の対立が深まる中、中国が対処方針を変えた形だ。(北京=林望)
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